遺言書がないと何が起きる? 札幌の司法書士が3つの実例で解説

遺言書コラム / 遺言の必要性

遺言書がないと何が起きる?
札幌の司法書士が3つの実例で解説

「うちは財産も少ないし、子どもたちは仲が良いから大丈夫」——そう思って遺言書を後回しにしている方は多くいらっしゃいます。しかし、遺言書がないことで残された家族が思わぬ苦労を抱えるケースは、決して他人事ではありません。

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遺言書がない場合に起きること

亡くなった方が遺言書を残していない場合、相続財産は相続人全員で話し合いをする「遺産分割協議」によって分け方を決める必要があります。この協議には相続人の全員の同意が必要です。一人でも欠けると成立しません。

⚠️ 遺言書がないと、こんな問題が起きやすい
  • 疎遠な親族(兄弟・甥・姪など)とも協議しなければならない
  • 協議がまとまらず、銀行口座の凍結が長引く
  • 不動産の名義変更(相続登記)が何年も放置される
  • 感情的な対立が生じ、兄弟・家族間の関係が壊れる
  • 相続放棄の3か月の期限内に決断を迫られ、混乱する

実際に起きた3つのケース

当事務所(札幌市東区)に相談に来られた方の事例をもとに、遺言書がなかった場合の問題と、その後の解決策をご紹介します(プライバシー保護のため内容を一部変更しています)。

ケース① 子どもなし夫婦の場合

配偶者が疎遠な義兄弟と協議をしなければならなかった

札幌市内在住の60代女性のケース。夫が急逝し、子どもがいないため、配偶者である女性と、夫の兄弟2名が相続人となりました。夫の兄弟とはほとんど交流がなく、連絡を取るだけでも精神的な負担が大きい状況でした。

遺産分割協議書への署名・押印を何度依頼しても「一度弁護士に確認したい」と言われ、解決まで約1年かかりました。その間、夫名義の銀行口座は凍結されたままで、生活費の確保にも苦労されました。

公正証書遺言に「全財産を配偶者に相続させる」と書いてあれば、兄弟姉妹に遺留分はなく、単独で手続きできました。

ケース② 子ども3人・実家の土地が争いの種に

仲の良かった兄弟が、実家の土地の扱いで対立した

北海道内の地方都市在住の70代男性が逝去。子どもは3人おり、長男は実家に同居、次男・三男はそれぞれ別の都市で暮らしていました。「長男が家を継ぐものだ」という父の意向は、口頭では伝えられていましたが、遺言書はありませんでした。

次男・三男から「口頭だけでは信用できない。法定相続分を主張する」と言われ、長男は実家を売却するか自分の資金で代償金を支払うしかない状況に。結果として長男は多額の資金を工面することになり、関係が修復不可能なほどこじれました。

「長男に実家の土地・建物を相続させる」旨の遺言書があれば、この争いは起きませんでした。

ケース③ 身寄りのない方のケース

財産が「特別縁故者への分与」にも該当せず、国庫へ

未婚・子なし・親も兄弟もすでに他界されていた70代女性。長年お世話になった隣人の家族に「自分の財産を使ってほしい」という意向を持っていましたが、具体的な遺言書はありませんでした。

法的な相続人がいないため、家庭裁判所に「特別縁故者への財産分与」を申し立てることになりましたが、手続きが複雑で費用もかかり、最終的には認められる保証もありませんでした。

遺言書に「隣人家族に○○を遺贈する」と書いておくだけで、本人の意向を確実にカタチにできました。

遺言書の有無で、手続きはここまで変わる

✅ 遺言書あり ❌ 遺言書なし
銀行口座の解約 遺言執行者が単独で手続き可能 相続人全員の署名・印鑑が必要
不動産の名義変更 遺言書+相続証明書類で対応 遺産分割協議書+全員の印鑑証明書が必要
疎遠な親族との関わり 原則不要(遺留分請求を除く) 協議に参加させる必要あり
手続き完了までの期間 数週間〜2〜3か月程度 協議が難航すると1年以上になることも
家族関係への影響 本人の意向が明確なためトラブルを防ぎやすい 感情的な対立が生じやすい

「うちは大丈夫」と思う前に確認したいこと

1

子どもがいない(または子どもが1人だけ)

子どもがいない場合、配偶者の他に「親・兄弟姉妹」が相続人になります。親が他界していれば兄弟姉妹が相続権を持ちます。予想外の人物が関わることを防ぐために遺言書は特に有効です。

2

特定の子どもに多く残したい・少なくしたい事情がある

介護を担ってくれた子どもに多く残したい、長年疎遠な子どもには遺留分のみにしたい——こうした意向を実現できるのは遺言書だけです。口頭の約束に法的効力はありません。

3

不動産(実家・農地・空き家)が相続財産に含まれる

2024年から相続登記が義務化されました。不動産が含まれる場合、協議が長引くと義務違反になるリスクもあります。遺言書があれば手続きをスムーズに進められます。

4

配偶者や子ども以外の人(内縁・友人・団体)に残したい

法定相続人でない方に財産を渡すには、遺言書による「遺贈」が唯一の方法です。遺言書がなければ、どれだけ関係が深くても一切財産を受け取ることができません。

📝 司法書士からのひとこと

「揉めるつもりはない」という家族間でも、いざ相続となると感情が動きます。遺言書は「争いを防ぐため」ではなく、「家族が迷わないためのガイドブック」だと考えていただければと思います。残された家族の負担を最小限にする、それが遺言書の一番の役割です。

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